りんご農家の一年の仕事~季節を感じる“果実づくりの芸術”~

「りんご作りって、秋に収穫して終わりじゃないの?」
そう思っている方も少なくないかもしれません。

ですが、実は、りんご栽培は1年を通じて行う繊細で計画的な作業の積み重ねです。

一本の木が美しい実をつけるまでには、農家の手間と工夫、そして季節ごとの絶妙なタイミングが欠かせません。


この記事では、信州のりんご農家の一年の仕事をご紹介します。


農業体験を考えている方、教育現場で農業を伝えたい先生方、また将来の就農を視野に入れている皆さまに、「一年かけて育てる芸術作品」としてのりんご作りの魅力を知っていただけたら嬉しいです。

春(3月~5月):芽吹きと準備の季節
春になると、りんごの木は冬眠から目を覚まします。
農家にとっても、本格的なシーズンのスタートです。

● 剪定(せんてい)の仕上げ
剪定は冬から続く重要な作業で、「今年、どこにどう実らせるか」を決める、いわば“木と対話する”作業です。
枝の配置や光の入り方を考え、無駄な枝を落とすことで、実のつき方や病害虫対策にも大きく影響します。

● 花のつぼみ観察と管理
りんごの花は、春の陽気とともに徐々に膨らみます。
つぼみの数や開花時期を見ながら、今年の収穫量を予測する重要な工程です。

● 受粉作業
りんごは自家受粉ではなく、他花受粉です。なので、自分の花粉では受粉できません。
そのため、何種類かのりんごの木を混ぜて植樹しています。
さらに、花が咲く短い期間の中で、タイミングよく花粉をつけてあげる必要があります。
天候にも左右されるため、毎年が“勝負の春”です。

夏(6月~8月):実を育てる大切な時期
りんごの実が日ごとに大きくなっていくこの季節は、気温や日照、雨量など自然との対話が欠かせません。

● 摘果(てきか)作業
1つの枝に複数の実がつくと栄養が分散されるため、より良い実を選び、他は取り除きます。
これが「摘果」であり、美味しいりんごを作るためには欠かせない作業です。
判断には経験と観察力が求められます。

● 病害虫・天候管理
夏は高温多湿になりやすく、カビや虫のリスクも高まります。
農薬の適切な使用や草刈り、風通しの確保など、健康な果実を守る努力が続きます。

● 水と日照の管理
地域によっては灌水(かんすい)作業も行います。りんごは太陽と水で育つ果実。
葉にしっかり光を届け、乾燥や過湿にならないよう丁寧に管理します。

秋(9月~11月):収穫の喜びと緊張感
いよいよ収穫シーズン。品種によって順に熟していくので、それぞれの「食べごろ」を見極めて丁寧に収穫していきます。

● 収穫作業
一つ一つ、手作業で傷つけないように収穫します。美しい赤や黄色に色づいたりんごが実ると、農家の表情にも笑顔がこぼれます。

● 選果・袋詰め
サイズ・色・形を見ながら選別し、箱詰め・袋詰めします。
見た目の美しさも品質の一部。
手作業で行うことが多く、「見せる農業」のセンスも問われます。

● 出荷・直売
契約先や市場、直売所などへの出荷が始まります。
この時期は全国に向けて発送作業が集中し、倉庫や出荷所はフル稼働。
収穫=ゴールではなく、お客様の元に届くまでが「仕事」です。

冬(12月~2月):土台を整える静かな闘い
りんごが実らない冬こそ、翌年に向けた準備の大切な時間です。

● 剪定作業
春の芽吹きに備えて剪定を始めます。
枝の流れ、前年の出来を見て「次の一年をどう実らせるか」を決める熟練の仕事です。

● 土づくりと施肥(せひ)
土壌分析を行い、木の健康状態に応じた肥料の調整を行います。
自然と向き合いながらバランスよく栄養を整え、春を待ちます。

● 機械や資材の点検
トラクターや選果機、脚立、資材置き場の整理などもこの時期に行います。
「農業の裏側」にある準備力が、次のシーズンの効率と安全を生むのです。

一年の流れチャート
季節 主な作業内容
冬(12~2月) 剪定、施肥、資材整理、計画立案
春(3~5月) 剪定仕上げ、受粉、つぼみ管理
夏(6~8月) 摘果、病害虫対策、水管理
秋(9~11月) 収穫、選果、出荷、販売

りんごは「育てる人の手間」で味が変わる
スーパーで見かける美しいりんごの背景には、季節ごとに違う顔を見せる自然と、それに向き合う農家の努力があります。

1年を通して、一つひとつの作業に意味があり、すべてが「おいしい実り」へとつながっているのです。
これから就農を目指す方や、農業に興味を持つ子どもたちにも、リンゴ作りは感性と知恵と手間が融合した“芸術”であることを、ぜひ知っていただきたいと思います。

補足:体験してみたい方へ
当園では、季節限定で短期の農業体験バイトや見学の受け入れも行っています。
実際の現場で「育てる手間」を体験してみることで、りんごの味がきっと変わって感じられるはずです。

Is Apple Farming Just About Harvesting in Fall?
Many might think so, but apple cultivation is a year-round process requiring careful planning and skilled labor. Each beautiful apple is the result of consistent effort, precise timing, and a deep understanding of nature.

This article introduces the year-round work of apple farmers in Nagano, Japan—perfect for those interested in agricultural experiences, educators, or future farmers.


🌸 Spring (March–May): Awakening and Preparation

  • Pruning: Fine-tuning tree shapes to guide fruit growth and improve airflow.
  • Bud Management: Monitoring buds to estimate harvest potential.
  • Pollination: Cross-pollination is essential, requiring precise timing and weather awareness.

☀️ Summer (June–August): Nurturing the Fruit

  • Thinning: Removing excess fruit to help remaining apples grow large and sweet.
  • Pest and Weather Control: Ensuring fruit health through spraying, weeding, and ventilation.
  • Water and Sunlight Management: Balancing irrigation and sunlight for optimal growth.

🍎 Autumn (September–November): Harvest Season

  • Harvesting: Hand-picking ripe apples at peak flavor and color.
  • Sorting and Packaging: Selecting apples by size and appearance; packing with care.
  • Shipping and Direct Sales: Delivering apples across Japan. The job isn’t done until they reach the customer.

❄️ Winter (December–February): Quiet but Crucial

  • Pruning: Preparing trees for spring growth based on last year’s performance.
  • Soil and Fertilizer Management: Enhancing soil health through analysis and balanced feeding.
  • Maintenance: Checking tools and machinery to ensure a smooth next season.

Annual Farming Cycle Overview

SeasonKey Tasks
WinterPruning, fertilizing, planning, equipment prep
SpringFinal pruning, bud care, pollination
SummerThinning, pest/weather control, watering
AutumnHarvesting, sorting, packing, shipping

The Flavor of Apples Depends on the Farmer’s Effort
Behind every apple is a year of mindful, skilled labor. Apple growing is a form of agricultural art—one that combines intuition, science, and dedication.


Want to Experience It Yourself?
We offer seasonal farm work experiences and short-term tours. Seeing and feeling the work firsthand will deepen your appreciation—and change the way you taste apples.


最新情報をチェックしよう!
>信州のりんご農家「アップルアート」

信州のりんご農家「アップルアート」

長野県主催「おいしい信州ふーど発掘商談会in東京」に出展いたします。
日時:2024年8月28日(水) 11:00~17:00(受付開始10:45)
会場:池袋・サンシャインシティ 展示ホールD   
〒170-0013 東京都豊島区東池袋3-1-4 文化会館ビル2F
長野県の恵まれた気候風土と確かな技術が育んだ逸品をご紹介いたします。
仕入れ業者の皆様には長野県の農産物の新たな発掘の機会として、ぜひ本商談会にご来場ください。
出店商品はECサイト内にあるリンゴ商品をすべてお持ちいたします。
・「飲むりんご」
・「立科の薫り」
・「アップルコーヒー」
・「Thrive」
・「鹿肉×りんごジャーキー」(ペット用)

CTR IMG