「農業って、冬は休みじゃないの？」
そんなイメージをお持ちの方も多いかもしれません。
確かに、作物の成長が止まる冬は、目に見える作業が少なくなります。
しかし、りんご農家にとって冬は“次の年の品質と収穫量を左右する”大事な仕込みの季節。
見えないところで、計画・準備・修繕・戦略——たくさんの仕事が動いています。
本記事では、プロの視点から「冬のりんご農家のリアルな日常」をご紹介します。
農業を学ぶ学生さんや、将来りんご栽培に挑戦してみたい方にもぜひ読んでほしい内容です。
剪定作業の重要性と手順
冬のりんご農家にとって最も代表的な作業が「剪定（せんてい）」です。
剪定とは、木の不要な枝を切って、翌年の実のつき方をコントロールする重要な作業。
実はこの作業だけで、1本の木につき数十分～30分以上かかることもあり、園地に何百本もある場合は、何週間にもわたる長期戦となります。
● 剪定の目的
・日光がしっかり当たるようにする
・風通しを良くし、病害虫のリスクを減らす
・木の体力を適切に配分する（実の数をコントロール）
→その選定量は約1/3に抑えます。それ以上は樹勢が下がります。
・収穫しやすい高さや枝ぶりに整える
りんごは「花芽（来年の実になる芽）」を前年の夏につけます。
その位置を見極めながら、実のつきすぎ・偏り・高さのバランスを調整していきます。
● 剪定の手順とポイント
大きく成長しすぎた枝を間引く
内向きに生えている枝や重なっている枝をカット
来年残したい花芽の位置に応じて、切る位置を調整
木ごとの癖を見て判断する（毎年同じ剪定はしない）
この作業には熟練の感覚と栽培理論と経験が求められます。
雪対策・防寒設備の点検・修理
長野県は冬に雪が積もるため、園地の環境整備も重要な仕事です。
● 雪の重みによる枝折れ・木の損傷防止
積雪が多い年は、枝が折れる・木が傾くといった被害が発生します。
●販促・加工品づくり・販路拡大の準備
冬の間は「販売・広報活動」にも力を入れる大切な時期です。
りんごの出荷は秋がピークですが、冬でも貯蔵りんごの出荷や加工品の販売が続きます。
● 加工品の製造
収穫後に規格外となったりんごを使って、以下のような商品をつくります。
ジュース
ドライりんご
ジャム
シードル
アップルコーヒー
リンゴ×鹿肉ジャーキー
これらは冬の副収入源となるだけでなく、ブランド力を高める“付加価値”の一つになります。
● 販促・イベント準備
冬のうちに、来年度に向けた販売戦略を考えたり、以下のような準備を進めます。
ホームページやSNSの更新
オンラインショップの商品追加・改良
パンフレットやPOPのデザイン作成
食のイベント出展の計画
販路の見直しは、収入の安定化や認知度向上に直結するため、冬の“見えない努力”の一つといえます。
冬の仕事 一覧表（参考）
作業カテゴリ 主な内容
剪定 枝の選定、花芽の調整、風通しと日当たりの確保
雪・寒さ対策 支柱立て、雪囲い設置、防寒設備の修理
加工・販促 ジュースやジャムの製造、SNS更新、通販準備
計画・事務 来年の植え替え計画、農薬や資材の発注、補助金申請
まとめ：冬の努力が来年の実りを決める
冬は作物が眠っている時間…だからこそ、農家が“動く季節”でもあります。
剪定や点検、加工や販売など、すべてが次の春からの作業と収入につながる重要な仕込みです。
夏の忙しいイメージばかりが注目されがちな農業ですが、冬こそ「プロの農家」としての力が問われるシーズンかもしれません。
これから農業を学ぶ方や就農を検討している方は、“何もしていないように見える冬”にこそ、学ぶヒントが詰まっていると意識してみてください。
自然と向き合う仕事には、四季それぞれのリズムと使命があります。
Summary Translation (English)
“Isn’t farming a break in winter?”
Many people may think so. While it’s true that plant growth slows down in winter, for apple farmers, this season is a crucial time for preparation that determines the quality and yield of the next harvest. Behind the scenes, winter is filled with planning, pruning, repairs, and marketing.
This article offers a professional look into the real daily work of apple farmers in winter — perfect for students studying agriculture or those considering growing apples in the future.
Key Winter Tasks for Apple Farmers
1. Pruning (剪定):
The most important winter task. Pruning removes unnecessary branches to manage fruit growth, light exposure, airflow, and tree health. It requires deep knowledge, skill, and experience. Each tree takes 20–30+ minutes to prune, and with hundreds of trees, it becomes a weeks-long task.
Goals of Pruning:
- Ensure sunlight and airflow
- Reduce pest/disease risk
- Control fruit quantity and tree vigor
- Adjust tree height and shape for easier harvest
- Maintain balance by removing about 1/3 of branches
2. Snow and Cold Protection:
In snowy regions like Nagano, farmers reinforce trees and repair damage to prevent breakage or bending due to heavy snow.
3. Processing and Marketing:
Winter is also the season to focus on value-added products and sales:
- Create juices, dried apples, jams, ciders, apple coffee, and jerky
- Update websites and social media
- Improve online shop listings
- Design promotional materials and plan events
These efforts help stabilize income and enhance brand value.
4. Planning and Administrative Tasks:
- Plan tree replacement
- Order supplies and pesticides
- Apply for subsidies
Conclusion:
Winter may seem like a quiet time, but it’s a season of hard work that directly impacts the next year’s success. Pruning, maintenance, product development, and strategic planning all happen now. For those studying agriculture or aiming to become farmers, winter holds key lessons. Each season brings its own mission — and winter is when true professionals shine.
