果樹栽培では、樹木の健康や果実の品質を保つために、土壌環境の整備が非常に重要です。
果樹は長期間同じ場所で生育するため、土壌の微生物環境が樹勢や果実の品質に直結します。
近年、土づくりの観点から注目されているのが、「有用菌」の活用です。こ
こでは、果樹栽培に役立つ好気性菌・嫌気性菌の種類とその働き、活用方法について詳しく解説します。
1. 土壌微生物の重要性
果樹の根は、栄養を吸収するだけでなく、微生物との相互作用によって健全な生育を維持しています。
土壌中の微生物は、有機物の分解、病原菌の抑制、栄養の循環、根の活性化など、多くの役割を担います。
特に果樹の根は深く張るため、土壌の団粒構造が整っていることが望ましく、微生物の活動が活発であることが健康な樹勢維持につながります。
土壌微生物は大きく分けて、**好気性菌(酸素を好む菌)と嫌気性菌(酸素を嫌う菌)**に分けられます。
それぞれの菌が土壌で異なる役割を果たすことで、果樹にとって理想的な環境が整います。
2. 好気性有用菌の特徴と働き
好気性菌は、酸素の存在下で活発に働く菌です。主に有機物の分解・団粒構造の形成・病害の抑制に関与し、果樹の根張りを助けます。
代表的な好気性菌は以下の通りです。
2-1. バチルス属(Bacillus属)
バチルス属は、枯草菌(Bacillus subtilis)やバチルス・アミロリクエンス(B. amyloliquefaciens)が代表的です。
根圏に定着して抗菌物質を生成するため、土壌病害の抑制に効果があります。
また、リン酸の溶解や植物ホルモン様物質(IAA)の産生にも関わり、根の発育や樹勢の安定化に寄与します。
果樹栽培では、施肥効果の向上や果実の肥大、糖度向上にも貢献します。
2-2. 放線菌(Streptomyces属)
放線菌は、土壌中で腐植を作る有機物分解菌として知られています。
セルロースやキチンなどの難分解有機物を分解し、土壌の肥沃度を高めます。
さらに抗生物質を生成するため、根腐れや白紋羽病などの土壌病害の抑制にも有効です。
2-3. トリコデルマ菌(Trichoderma harzianumなど)
トリコデルマは糸状菌の一種で、病原菌と競合して生育を抑える性質があります。
根の周囲で活性化することで、病害抑制と根の成長促進の両方の効果が期待できます。
果樹園では白紋羽病や根腐病の予防に有効で、根圏環境を整える重要な役割を持ちます。
2-4. 光合成細菌(Rhodopseudomonas属)
光合成細菌は、光を利用して有機物を分解し、アミノ酸や成長促進物質を生成します。
根や葉の活性化に寄与し、葉色改善や果実の糖度向上など果樹の品質向上にも効果があります。
2-5. 硝化菌・リン酸溶解菌
硝化菌はアンモニア態窒素を硝酸態に変換し、リン酸溶解菌は土中の不溶性リン酸を植物が吸収できる形に変えます。
これにより果樹が栄養を効率的に吸収でき、施肥効率が向上します。
3. 嫌気性・通性嫌気性有用菌の特徴と働き
嫌気性菌は酸素を嫌う菌、あるいは酸素の有無にかかわらず活動できる通性嫌気性菌です。
果樹栽培では、発酵型土壌の形成・腐敗抑制・根圏保護に役立ちます。
3-1. 乳酸菌(Lactobacillus属)
乳酸菌は、ボカシ肥や発酵堆肥作りに欠かせません。
乳酸を生成してpHを安定化させることで、腐敗菌や悪臭の発生を抑えます。根腐れ防止にも有効で、果樹園の土壌改良に広く利用されています。
3-2. 酵母(Saccharomyces属)
酵母は糖をアルコールやアミノ酸に変えることで、根圏の他の有用菌を活性化します。
結果として根の生育促進や樹勢安定、果実の品質向上に貢献します。
3-3. 光合成細菌(Rhodobacter属)
光合成細菌は嫌気条件下でも有機物を分解し、窒素固定や成長促進物質を生成します。
果樹園では樹勢を安定させ、果実の着色改善や糖度向上に寄与します。
3-4. EM菌(Effective Microorganisms)
EM菌は、乳酸菌・酵母・光合成細菌などの複合菌群で構成されます。
土壌中の微生物バランスを改善し、腐敗防止や発酵型土壌の維持に役立ちます。
果樹栽培では土壌の健康維持や果樹の活性化に広く活用されています。
4. 果樹園での実践的な活用法
果樹栽培で有用菌を活用する際には、土壌環境や施用タイミングに注意することが大切です。
4-1. 冬〜早春の土づくり
剪定後や冬期には、**好気性菌(バチルス菌、放線菌、トリコデルマ)**を有機堆肥や腐葉土に混ぜて施用します。
1〜2か月前に土に混ぜることで、春の発根に備えた健康な土壌環境を整えます。
4-2. 発酵堆肥づくり
米ぬかや糖蜜を用いて、乳酸菌・酵母・光合成細菌を活用したボカシ肥を作ります。
通性嫌気性菌による発酵が安定すると、悪臭を抑えつつ有機物を効率よく分解できます。
4-3. 生育期の根圏強化
生育期には、光合成細菌やバチルス菌の希釈液を潅水や葉面散布で施用します。
これにより、根の活性化や樹勢の安定、果実品質向上が期待できます。
4-4. 落葉・剪定枝の分解促進
剪定枝や落葉を堆肥化する際には、放線菌やセルロース分解菌を散布します。
有機物が効率よく分解され、土壌の団粒構造形成に寄与します。
4-5. 病害予防
果樹の根腐病や白紋羽病などの予防には、トリコデルマ菌や乳酸菌を株元や根圏に定期的に施用します。
微生物による競合や抗菌作用で、病原菌の発生を抑えます。
5. 有用菌活用のポイント
- 好気性菌と嫌気性菌のバランスを重視する
好気性菌は分解と根張り促進、嫌気性菌は発酵と病害抑制に役立つため、両方を適切に活用することが重要です。 - 土壌環境の改善を優先する
有機物の適量施用、排水性の確保、通気性の向上により、菌の働きが最大化されます。 - 施用タイミングを守る
土づくり、発酵堆肥、生育期の根圏活性化など、目的に応じて菌の種類と施用方法を選択します。 - 微生物資材の併用も有効
EM菌や市販のバチルス菌・トリコデルマ菌を活用すると、果樹園での土壌改良・病害抑制が効率的に行えます。
6. まとめ
果樹栽培における土づくりでは、微生物環境の整備が果樹の健康や果実品質の向上に直結します。
好気性菌と嫌気性菌をバランスよく活用することで、根張りを促進し、病害を抑え、有機物の分解・栄養循環を効率化できます。
特に果樹園では、冬期の土づくり、発酵堆肥作り、生育期の根圏活性化、剪定枝の分解、病害予防など、目的に応じた菌種選択と施用が重要です。
乳酸菌・バチルス菌・放線菌・トリコデルマ菌・光合成細菌・酵母などの有用菌を上手に組み合わせ、土壌と果樹の健全な関係を作ることで、長期的に安定した果樹栽培が可能になります。
果樹の健やかな成長と美味しい果実を育むために、微生物の力を最大限に活用しましょう。
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